「ヤマハレディースオープン葛城」は、初日から首位に立った山口裕子(やまぐち・ひろこ)が通算1オーバー217で優勝、賞金1,440万円のほか、副賞のマルチフィッシングボート、グランドピアノを手にした。山口は7年ぶりツアー通算2勝目を挙げた。2位には2打差で上原彩子、辛炫周(シンヒョンジュ)の2人が入った。また、ベストアマチュアには通算7オーバー223の森田理香子さんが輝いた。
詳しくは大会レポートで。
一時は誰もが楽勝と思っていた。4アンダーで首位スタートの山口裕子は、8番でバーディを奪い、同じ組で回っていた福嶋晃子がそのホールでダブルボギーを叩き、その時点で一気に2位と5打差をつけたからだ。
ところが次の9番で山口がボギー、10番ではティショットを大きく左に曲げ、池に入れてしまいダブルボギー。さらに負の連鎖は続き、12番でもティショットを池に入れてしまい、ダブルボギーと見る見るうちに貯金はなくなっていった。気がつけば2位とは1打差。
「苦しかった。(大量リードのときと)意識は変えていなかった。」だが、自分でも知らないうちに優勝のプレッシャーがかかっていたのか「しびれていたのかもしれない。」と振り返る。そのあとも14、17番でボギーを叩き、2オーバーまでスコアを落とした。それでも追いかける選手たちも難コースにてこずり、山口が首位。
しかし、1組前でプレーする上原彩子は、18番で3打目を3メートルにつけ、バーディチャンス。彼女はこの時点で3オーバー、入れれば山口と並ぶことになる。が、ボールはカップの手前で切れ、パーに終わる。
もう一人同じ組で回る辛炫周が3オーバーで追ってくる。彼女も18番で同じようにバーディチャンスにつけるが、山口もピン横2メートルにつける。先に打った辛が外したことで、2パットなら優勝が決まる。一気に余裕が生まれた山口はこのバーディーパットを沈め、有終の美を飾った。
「嬉しいです。本当に。」2001年にツアー初優勝を挙げて以来、7年ぶりの優勝だ。2勝目までが長かった。これまでも勝つチャンスが何度もあったものの、プレーオフで2度負けるなど優勝を逃してきた。「去年の夏までが一番つらかった。ずっと予選落ちばかりで。」14試合中7試合予選落ちと予選を半分しか通れなかった。それが「ポンと1回よいスコアが出て、それが自信になった。」おかげで、シーズン後半はベスト10フィニッシュが8試合と復調した。
もともとゴルフを「長くやるつもりはない。当初は35歳までと思っていたけど、もう気づいたら33歳なんですよね。あと2年くらいしかないので、もうちょっと頑張ろうかなと考え始めています。もうちょっとやりたいですね。」とこの優勝で考えも変わるだろう。ちなみにゴルフをやめたあとは「飲み屋のお店を開きたい」とか。
初日から2位の座をキープし続け、最終日は首位と4打差でスタートした上原彩子。宮里藍の先輩格であり、元祖・沖縄の星でもある上原だが、まだツアー未勝利。ノドから手が出るほど優勝を飾りたい上原にとって、難コースでしかも風が吹くコースコンディションは、風の強い沖縄育ちにとって好都合だといえた。
「他の人たちは、風が強まるとプレーに支障をきたすとよく言うようですが、私はまったく気になりません。」と上原は常日頃からそう口にする。大会初日から風が吹く中でのゴルフが強いられ、選手がスコアメイクに苦しむ中、上原はパーセーブを積み重ね、最終日はイーブンパーでのスタートを迎えたのだった。
初日はプロ入り後、1ラウンドにチップイン3回という自身初の記録をマークしたこともあり、2アンダー発進。2日目は2オーバーとスコアを落としたものの、優勝を射程圏内に止める2位の座を死守。チャンスが訪れそうだった。
選抜高校野球では出身地の沖縄代表校・沖縄尚学が優勝し、その勢いに自分も乗りたいと思った。その反面、気になることもあった。バーディー数だ。初日は5個、2日目は2個。パットのタッチが合わなくなってきたのだ。特にショートパットが決まらない。初日、2日目ともにホールアウト後は練習グリーンでショートパット練習に多くの時間を割いた。
そして迎えた最終日。悪い予感は的中し始めた。ショートパットが入らない。肝心な勝負どころで3パット。それでも首位を走る山口が失速し、上原は耐えるゴルフで1打差に詰め寄った15番ホール。勝負が掛かったバーディーパットを上原はショートし、パーパットも外してしまったのだ。
結局3ボギーの75でフィニッシュ。勝者とは2打差の2位タイに終わったのだった。
「ノーバーディーではきつい。この難コースでは、どうしてもボギーを叩いてしまいます。それなのにバーディーが獲れず、スコアの貯金を作れないと心にも余裕が出来ませんよね。優勝のための次の課題はバーディーチャンスを着実に沈めることですね。」と大会3日間の自分のゴルフを分析し、クラブハウスを後にした。
敗れた試合から学んだ上原。勝てなかったとはいえ、近い将来の初Vには前進したのかもしれない。
日本ゴルフ協会のナショナルチームに選出され、国際大会にも何度も出場経験を持つ森田理香子さんが通算7オーバーで7位タイに入り、見事、ベストアマチュアに輝いた。
「今週は頑張りました。そして疲れました。今日も最後のホールで崩れてしまったことが悔しいです。次からは最終日にスコアを伸ばせる選手になりたいです。プロのトップ選手もスコアメークに苦しむ難しい葛城ゴルフ倶楽部で、頑張れたことで自分に自信を持てると思います。良い勉強になりました。ありがとうございました。」と笑顔でベストアマチュア受賞を喜んだ。
祖父がゴルフ練習場を経営していた影響をうけ、8歳からゴルフを始めた森田さん。高校1年生のときからナショナルチーム(アマチュアゴルフ界の日本代表)に選出され、将来を嘱望されている逸材だ。これまでに全米女子アマ・ベスト32、世界ジュニア団体優勝、世界アマ個人2位、国体個人・団体優勝、関西女子アマ優勝など数々のタイトルを手にしてきている。 プロトーナメントでも、これまで15試合に出場、実に2/3の10試合で決勝ラウンドに進出している。中でも昨年の「リゾートトラストレディス」に続き「ヤマハレディースオープン葛城」でも7位タイに入るなど、既に実力はトッププロに肩を並べるくらいの持ち主だ。
森田さんの大きな魅力は、平均250ヤードというドライバーショットだ。アプローチやパッティングは練習すれば上手くなっていくが、“飛ばし”に関しては天性の才能といわれている。 今年はプロテストを受験。そして来年はきっとプロゴルファーとして、戻ってきてくれるだろう。
4月4日(金)から6日(日)までの3日間にわたり、静岡県袋井市の葛城ゴルフ倶楽部で開催された「ヤマハレディースオープン葛城」。大会最終日は7,000人を超える大勢のギャラリーがコースへ訪れた。そんな熱い戦いを陰で支えたのは延べ566人のボランティア。競技の運営・進行に対して地元自治体から後援をいただいた経緯もあり、同大会主催者は今後の開催地元周辺市町との協力関係をさらに築くことを目的にして静岡県、袋井市、掛川市、磐田市、森町の地方自治体にそれぞれ100万円、総額500万円を寄贈した。
贈呈式は大会表彰式終了後、会場内ギャラリープラザで行なわれ、鈴木望磐田市長をはじめ、各自治体の代表者が出席。伊藤修二大会会長(ヤマハ株式会社取締役会長)から目録が手渡された。
地元の地域活性、社会福祉などの活動の一助になることを願うとともに、今後も開催地域と密着した活動を考えていくという。同席したボランティアスタッフたちから熱い拍手が沸き上がり、それだけでも大会が成功裏に終わったことが感じられたのだった。