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森口祐子さん インタビュー

ヤマハレディースオープン葛城(YLOK)のオフィシャルアドバイザーでもあり、今年1月「日本プロゴルフ殿堂」顕彰者に選出された森口祐子プロに、毎年さまざまなドラマが生まれる、上がり3ホールについて聞きました。

山名コース上がり3ホール
ゴルフの深い愉しみ コースとの対話、挑戦 その1 【山名16番パー4】

──毎年さまざまなドラマが生まれる上がり3ホール。その秘密をプロの立場から解き明かしていただけますでしょうか。

はい。ゴルフの楽しさでもあり、面白さの一つである「戦いのなかでの選手の心理。コース設計との葛藤。」が良く現れるのが16番ホールです。
一つは地形的な難しさ、「30m以上の打ち下ろし」「葛城特有の風」ですね。

プレーヤーがどんなに練習を重ねても自分の力で対応できない部分、それが自然環境であり、それを受け止めないと16番は攻略できません。

そして、その前の15番のプレイも大きく影響します。選手たちは、今日吹いている風の強さや方向などを観察し、ホールを消化するごとにデータは蓄積していきます。ところが15番はS字型のホールなので微妙に風の変化があり、2打目では右から吹いていた風が3打目では左から来ている。うまくバーディーを取ったとしても、この微妙な風が選手のコンピューターを狂わせるのです。 この風を感じながら16番のティーイングエリアに移動する途中、16番のグリーンのピンフラッグが一瞬見えます。選手はそのフラッグの揺れ方を見て新たな情報をインプットし、さらに15番の情報も加味しながらティーイングエリアに立ち、打つ方向を決めるのです。先程も左から右の風でしたから、「ここは左側狙い」と確信します。ところが、打った瞬間に右から左の風に変わることがあり、風に翻弄されるのです。

打ち下ろしホールの地形的な難しさ、安定しない葛城特有の風、蓄積された風の情報とのギャップ、この「いたずらされている感」があるホールがツアー1難しいパー4と言われる由縁です。

──16番のティーイングエリアに立つとより一層の緊張を強いられますね。

そうです。だから、オナーをとることがよいとは限らないホールだと思います。私が優勝したときも16番はオナーではなかったんです。その時は、前に打った人が、左にビューンとOBし、私は右に置きに行きました。相手がミスをすればチャンスと思われるかもしれませんが、お互いリスペクトしあっている選手のミスは、自分に起こるかもしれないというある種の恐怖感と背中合わせで、右に置きに行っても祈るような気持ちになりました。どんなに良いスコアで、どんなに良いスイングで回っていても葛城の場合、あの16番のことは常にシルエットとして頭の中にあって離れないホールなのです。

──ティーショットもそうですが、セカンドがまた難関ですね。

そう。ティーショットは無難にいけて、フェアウエイど真ん中とします。ところが、第2打地点は左足下がりが多く、部分的にはつま先上がりもあり、ライ(足場)は安定していません。このようにボールを上げづらい難しいライから狭い花道に向かって打たなくてはならないのです。低いボールでしか対応できない選手は、手前から転がって奥の崖まで行ってしまったらどうしようという不安があったり、高いボールを持ち球にしている選手でもグリーンを直接狙うか、花道を選ぶかのせめぎ合いがあったりします。この攻めるか守るかの選択の難しさが井上誠一設計コースの難しさでもあるのです。

最近はこうした難しい条件でも、どんどんピンを狙ってくる攻めのゴルフに変化してきたように感じます。見ていてもハラハラするぐらい狙ってくる選手が増えました。このホールは年間のツアーを通じて難易度の高いホールとして知られていますが、特に優勝争いをしている選手は勝負してくるケースが増えたと解説していて思います。攻めないと勝てなくなってきているのです。難しいコースで攻めのゴルフができるようになれば、また一つ成長できるのではないでしょか。

山名コースの上がり3ホール(最後の16番、17番、18番ホール)は、優勝争いをしていなくても、何回プレイしても緊張するホールなのです。明日への通知表をもらっているような気がして、絶対ミスしたくない、いやな気持ちで上がりたくないと思うのがこの3ホールです。サンデーバックナインとか上がり3ホールが勝負だと言いますが、勝ちたいというプレッシャーの心理の妙、それから地形の妙(打ち下ろし)、風の妙(視覚情報の裏切りや、風の変化)が重なり、いろんなことが起こるのです。

「ゴルフの深い愉しみ コースとの対話、挑戦 その2 【山名17番パー3から18番パー5】」を見る

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