OPEN

  • twitter
  • facebook

CLOSE

大会最終日レポート

大会最終日レポート

成田美寿々が4打差を逆転し、春の女王に輝く!
アン ソンジュは1打及ばず連覇逃す

2019年、春の女王戦。成田美寿々が最終日にベストスコアをマークし、大逆転劇を演じて今季初優勝を飾った。ツアー通算12勝目は生涯獲得賞金額5億円突破を実現させ、自身が掲げた年間5勝の1勝目となった。

最終日、大会2連覇を目指すトータル4アンダー、単独首位のアン ソンジュとは、4打差のトータルイーブンパー発進となった成田は、バーディー発進でショット、パットの自信を深めた。フロントナインでスコアを二つ伸ばし、後半に入って11、12番での連続バーディー奪取でソンジュを捕らえる。14番でソンジュが痛恨のボギーを叩いたことで、ついに成田が単独首位に立った。

だが、粘りを見せるソンジュは、17番パー3で8メートルの距離のバーディーパットをねじ込み、再び首位タイに返り咲く。

勝負は最終18番パー5へ持ち込まれた。成田は1、2打目ともに会心のショットを放ち、ツーオンに見事成功。ソンジュは3打目でグリーンを捕らえる。成田のイーグルパットは外れ、ソンジュのバーディーパットはカップ手前で止まる。逆転優勝の懸かった2メートルのバーディーパットをカップ真ん中から沈め、成田の逆転劇は、華々しく幕を閉じたのだった。

優勝カップを手にする成田をオレンジ色の夕日がライトアップ。桜の花びらがユラユラと散っているシーンが、平成最後の“春の女王戦ドラマ”の終わりを演出しているようだった。

過去2年間のプロテスト合格者のうち最上位選手に贈られるベストルーキー賞は、最終日に68をマークし、トータル1アンダー・3位タイとなった新垣比菜が獲得した。

“奇跡”を起こした成田美寿々
会心の1番ホールから逆転Vの扉が開いた!

成田美寿々が前日に続いて、自ら「奇跡」を起こした。

最終日、トータル4アンダーで単独首位のアン ソンジュとは4打差の、トータルイーブンパーで追う成田。これまで本大会で予選通過を果たしたのは出場5回中2回。自己最高成績は14年大会の40位タイでしかなかった。苦手コースでの予選通過、さらには優勝を争える順位で最終日を迎える。それを成田は「奇跡」だと前日そう口にしていたのだ。

今大会は連日、晴天に恵まれたものの、その一方で強い風が吹き続け、大会3日目終了時点でアンダーパースコアの選手は二人しかいないほど、コースコンディションは難易度を高めていた。

大会3日間で最多バーディー奪取数は穴井詩の12個。続いてソンジュ、大山志保、黄アルム、ペ ソンウが9個。54ホールを終えて二桁台のバーディー奪取をした選手は1人しかいない状況。そのなかで、ソンジュは計5オーバー(3ボギー・1ダブルボギー)のステディーなゴルフによってトータル4アンダーとし、単独首位の座に就いていたのだ。

今大会でのベストスコアは第1ラウンドと第3ラウンドが69、第2ラウンドが68。タフなコースで縮められる最大限スコアは3つから4つ。トータル4アンダーで首位を走るソンジュにとっては、優位なデータだった。さらに14、18年大会を制した実績があり、大会2連覇を目指すのに死角はないように思われた。

最終日、ソンジュと同じ最終組で回る成田は、スタートティーで集中した顔をしていた。大会3日間、このホールでのドライバーショットがフェアウエイをヒットしていない。出だし早々にプレーのリズムを狂わし兼ねないティーショットは打ちたくない。即ボギーにつながる危険性があるからだ。成田の1打目は会心の当たりで、フェアウエイセンターを捕らえた。その瞬間、最終日のファーストショットにも関わらず、ティーを取り囲むギャラリーの目も気にせず、成田は右手拳を握りしめ、ガッツポーズを取ったのだった。

それは、逆転優勝の扉を叩き破る仕草と化す――。1番でバーディーパットを沈め、6番でもバーディー。7番でボギーを叩くものの、8番でバウンスバックに成功。前半を34としてサンデーバックナインに向かう。11、12番での連続バーディー奪取で、トータル4アンダーまでスコアを伸ばし、ついにソンジュと並び首位に立ったのだった。

14番でソンジュが痛恨のボギーを叩き、成田が単独首位となったが、17番で8メートルのバーディーパットをソンジュがねじ込み、両選手ともトータル4アンダーの首位で最終18番パー5を迎えたのだった。

成田のドライバーは振れていた。アイアンショットは切れていた。パットは安定していた。「今年は、昨年掲げていた年間5勝を達成できなかったので、それを達成するのが目標」。だが、成田は毎年、春先は好調ではなかった。

今オフは「高い弾道」「飛距離アップ」をテーマに掲げ、プロコーチとトレーナーとの3人タッグで挑んだという。「飛距離は少し伸びた気がします。アイアンショットでは、各番手5ヤードはアップしましたから」。飛距離はアドバンテージ。難攻不落の大会舞台・葛城ゴルフ倶楽部で、2打目に6番アイアンを手にすることがなかったほど、ドライバーショットは飛び、アイアンショットも飛んでいたのだ。

成田は最終18番でツーオンに成功する。一方のソンジュは3オン。成田のイーグルパットは決まらず、ソンジュのバーディーパットはカップ手前で止まる。成田のバーディーパット、距離2メートルを沈めたならウイニングパットとなる。

「(全ホール)2パットでOKと思って4日間プレーして来ましたが、このパットだけは入れたい一心で打ちました」。ジャストタッチのパットは、カップの中に消えた。成田は左脚で宙をキックするような大胆なガッツポーズを取り、逆転優勝の喜びを体全体で表現して見せたのだった。

ツアー通算12勝目を飾り、生涯獲得賞金額は5億円を突破。年間5勝の目標のうち、1勝を春の時期に挙げたのだ。「5勝」は、2020年の東京五輪選手に選ばれるために必要な勝利数であることを「算出しての数字」だという。

「3パットをしない」目標も見事クリアし、難攻不落のコースでの勝利は自信につながる。「2パットで収める方法は?」と優勝インタビューで尋ねると、成田はこう答えた。「たとえバーディーパットでも、心の底から2パットでいい!と思うこと」。欲張らず、誠心誠意の一打を積み重ねて行く。そのゴルフを72ホール継続できたことを、成田は心底喜び、これからも続けて行くと誓った。年間5勝達成は、すでにカウントダウンに入ったのかも知れない。

大会最終日のコメント

アン ソンジュ
2位・トータル4アンダー(2バーディー・2ボギー)

「今日はチャンスにつかず、パーセーブばかり考えないといけない1日でした。ここまで来たら残念ですけど、成田選手が上手すぎました。でも(満身創痍の体で)4日間プレーできて、ここまで上手くいくとは思わなかった。勉強になったし、どこ(のプレー)が悪いのかもわかった」(報道陣の前で悔し涙をこぼす)

新垣比菜
3位タイ・トータル1アンダー(5バーディー、1ボギー)

「今日はトップ10に入って、さらにトップ5に入ればいいと思ってスタートしました。ロングパットの距離感と、アプローチの練習の成果を出せて良かったです」(ベストルーキー賞を獲得)

ペ ソンウ
3位タイ・トータル1アンダー(4バーディー、3ボギー)

「今日は何カ所かラッキーなところもあり、ツキがあったと思います。ツアーが始まって、まだ1カ月ちょっとですけど、学ぶために頑張っていますが、ここまで流れよくできてうれしい。ギャラリーの皆さんも声援をくださり感謝しています」

金澤志奈
14位タイ・トータル5オーバー(1バーディー、5ボギー、1ダブルボギー)

「今日は本当に厳しいゴルフになりました。(成田さんやソンジュさんと回って)二人のプレーを見てたくさん勉強になりました。また今日のように最終組で優勝争いができるように頑張りたい」

ページのトップへ戻る