大会3日目は好天に恵まれ、土曜日ということもあって、2,852人のギャラリーが来場。気温は13.1度、東からの風は4.0m/sと、荒天に見舞われた予選ラウンドとは打って変わって、比較的穏やかな一日となった。
初日、2日目と首位タイ発進を決めていた西郷真央が、この日も4バーディー、ノーボギーと安定したゴルフで、ベストスコアタイの68をマーク。通算11アンダーまでスコアを伸ばして、後続に5打差をつける独走状態となり、2週連続、今季3勝目へ向けて王手をかけた。
一方、同じく首位タイをキープしていたペ・ソンウは、2バーディー・3ボギーとスコアを伸ばすことができず、通算7アンダーの単独2位に後退し、西郷とは明暗が分かれる格好となった。
通算6アンダーの3位タイに、青木瀬令奈、フォン・スーミン、菅沼菜々の3人が追走、さらに1打差の通算5アンダー、単独6位に全美貞がつけている。2日目に64をマークしたアマチュアの上田澪空は、スコアを3つ落とし、通算4アンダーの7位タイに後退した。
プロ転向11年目、ツアー通算2勝の青木瀬令奈が古強者(ふるつわもの)ぶりをフルに発揮し、3位タイに順位を上げて明日の最終日最終組に加わった。
スタートの1番パー4ホールでパーオンを逃した。3打目をカップに寄せ切れず、2メートルのパーパットを外してのボギー発進。出鼻をくじかれ、プレーのリズムも乱れて当然だが、その後はツアープロでの“経験”を生かしてパーセーブを積み重ねたのだった。
「バーディーチャンスになかなか着けられませんでした。逆にボギーを打っても仕方がないような内容でした。でも(ボギー必至の)バンカーショット、パーパットが上手く打ててパーをセーブできたのが良かったです」。前半プレーを青木はそう振り返る。出だしでのボギー後、8ホールをパーにまとめて折り返し、我慢、忍耐のゴルフにご褒美が待っていた。
後半の10番パー4ホールで2メートルのバーディーパットが決まり、14番パー4ホールでは15メートル、15番パー5ホールでは11メートルもの距離があるバーディーパットがカップに消えてくれた。最終18番パー5ホールでは、ピンまで残り63ヤードの3打目をピン右下1.5メートルにピタリと寄せ切ってバーディーフィニッシュ。18番グリーン周りのギャラリースタンドからの大きな拍手に笑顔で応える。ギャラリーの拍手もまたナイスプレーのご褒美だ。
ムービングサタデーのこの日は4バーディー・1ボギーの69をマークし、青木は11位タイから3位タイに浮上し、首位の西郷とは6打差とした。6打差を大差と捉えるか、追い着けると考えるかは思考によって異なる。青木は、いったいどちらなのか。
「グリーン上では、明日(最終日)のカップ位置も予想していました。大会3日間のピン位置だけではなく、これまでの過去のピン位置も含めて『あそこがカップ位置ならパーオンショットをどこへ落としたら良いのか』と。グリーン上のマウンド位置も再確認していました」。
優勝争いは度外視し、明日のホール攻略、パット対策を練り、イメージどおりのショット、パットを紡ぐことがスコアメイクに結びつく。その結果が順位に表れる。目の前のパットだけではなく、翌日のプレーを考えながらラウンドする余裕は、トーナメントで戦って来た経験値の高さがあるからだ。
「明日も60台(スコアの)ゴルフを目指します」。力強くそう言い切って取材インタビューを終えた。たとえ首位と何打差あったとしても、ゲームはまだ18ホール「も」残っているから――自身にそう言い聞かせているようだった。
「ボギーフリーでゴルフができて良かったです。思ったショットを打てている回数が増えているし、パッティングもいいストロークで打てています。(5打差の)数字のことは考えずに、いつも通りに自分のプレーに集中して全力を尽くして、結果は後からついてくれれば」
「今日はショットがあまり良くなかったので、アプローチに集中してやりました。ボールに土がついていたりもして、全体的にあまり運が良くなかった日でしたね。トップとの差はありますが、明日は1打でも追いつけるように、思い切ってやりたいと思います」
「我慢のゴルフでした。今日は全美貞選手という大先輩と回って、こんな悪いコンディションの中、安全にプレーしているのを見て、とても勉強になりました。毎日アンダーパーで回りたいと思いますので、明日もアンダーパーで回りたいです」
「ひと言で締めれば、めっちゃ悔しいっていう感じですね。アプローチが寄せ切れずにボギーとか、もったいない部分が結構ありました。悪いなりにも1オーバーでまとめられたかなと言う感じ。優勝したいけど、より1個でも上の順位、というそのせめぎ合いですね」
「3日間で一番今日が難しく感じて、風も強かったので、安全に安全に。ショットが安定していたので、大きなミスもなく、アンダーパーでまわれてすごく良かったです。せっかくの良い位置なので、上を目指して頑張りたい」
「これだけのギャラリーがいる中でやるのは初めて。こんなに緊張する中でのプレーはなかなかないなと思って、それに打ち勝てるように、経験を積んでいくのが大事かなと、今日はその第一歩と思ってやりました。明日は今日の反省を活かしたいです」
(原稿・写真:伝昌夫、菅野雅裕)