2024年大会がついに開幕。初日は午後から雨が心配されたが、最後まで天候は大きく崩れることはなく、第1ラウンドは1776人のギャラリーがプロのプレーに熱視線を送った。
そんな中、午前スタートの小祝さくらが、6バーディー・ノーボギーの完璧なゴルフで、6アンダーをマークして単独トップに立った。1打差の2位タイに、昨年覇者の穴井詩と、午後スタートながら1イーグルや4連続バーディーなどを決めた竹田麗央がつけている。
さらに1打差の4アンダー4位タイに、櫻井心那、岩井千怜、森田遥、川岸史果、鶴岡果恋、河本結、岡山絵里の7人がつける大混戦。第2ラウンドは雨で競技開始時間が9時から変更となり、今年の“春の女王戦”は早くも風雲急を告げている―。
難攻不落の葛城ゴルフ倶楽部18ホールでのプレーを6バーディー・ノーボギーで終えた小祝さくら。第1ラウンドで単独首位に立ち、メディア記者らの取材を受けた。しかし、表情は、それほど明るくはなかった。
「バーディースタートを切るとボギーが続き、結局ハーフターンしたら『スコアが良くない』みたいなイメージが結構ありました。何故なのかは分からないですが、そういうことが平均したら多くて…」
インコース10番・パー4ホールから発進した小祝は、ピンまで残り115ヤードの2打目を2メートルに着け、バーディーパットを沈めた。ボールをカップから拾い上げると、小祝は気持ちを切り替えたという。スタートホールのバーディーは無かったことにし、「ここからもっとバーディーを獲る」という気持ちを強めた。その結果が6バーディー奪取だ。
「ショットがすごく良いわけではないんですが、なんだか結構うまくいってくれて(の結果)。このコースはティーショットが難しいので、心配はあったんですが今日はうまくいってくれました。当たりが薄くて(ショットが)右に行ってしまったり、思い通りの球が打てなかったりした時があったので、(これからの練習で)直してショットイメージを良くしたいです」。
ショットの不安感を抱えての首位スタートでは決して素直には喜べない。それが明るくはない表情の原因だったのだ。心から喜んだ笑顔に変えるには、今季初優勝しかない。
昨年覇者の穴井詩は、第1ラウンドを1イーグル・4バーディー・1ボギーの67、5アンダーにスコアをまとめてホールアウトした。
首位とは1打差の5アンダー2位。自身初の大会2連覇に向けて好調な滑り出しだろう。昨年大会の第1ラウンドは4バーディー・2ボギー・1ダブルボギーのイーブンパー(36位タイ)。天候や気温、コースコンディションの違いは当然あるものの、アンダーパーをマークしてスコア貯金を作れたのは大きい。
「例年とは違ってグリーンスピードが速くはありませんでしたが、アイアンショットがイマイチ良くなく、パーオンできなかったホールも多かった。でも、次打のアプローチショットが寄せやすい(ボギー阻止の)安全エリア方向へ外した」ことで、ボギーは一つで済んだのだという。
今季の目標に掲げたパーオン率のアップ。具体的にはアイアンを手にしたならグリーンを捕らえることでその率を高めたいそうだが、その一方で外した際は、寄せやすいエリアということも考慮してショットに臨むようになった。それがボギーの少ないスコアに結びついているのは確かだ。
「今日の目標スコアを4アンダーにしていたのですが、ポポンとスコアを伸ばせたのでラウンド途中に目標5アンダーに修正しました。そしたら5アンダーでスコアが止まってしまいました(苦笑)」。
前日のプロアマ大会では小林浩美LPGA会長と同組で回り、様々なアドバイスを授かった。その内容は「企業秘密」からなのか詳しくは明かさないが「コンディションによって大会各日の目標を上げ下げし、それを達成すること」の大切さを早速、実践しての好発進だ。
同組でプレーした小祝さくらが6バーディー・ノーボギーの66で回って単独首位に立ったが、「相乗効果もあったと思います。プレーのリズムも流れも良くて…。この組に入れてもらえて良かったです」と穴井は笑顔を浮かべ、喜んだ。
明日の第2ラウンドは朝方まで降雨が続く天気予報だが、硬くて速いグリーンはボールが止まりやすくなるのは必至。飛距離の出る穴井にとってはアイアンを手にすればするほどパーオン率は高まり、バーディーチャンスも高まるのが必然。第1ラウンドで作り上げたスコア貯金5アンダーが大会2連覇への大きな布石になりそうだ。
今季ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディース」でツアー通算5勝を挙げたのは岩井千怜。ツアー4戦終了時点でメルセデス(年間)ランキング2位につけている。
勝利数を伸ばすことで初の年間女王タイトルをグッと引き寄せられる。そんな岩井は難攻不落の葛城ゴルフクラブを舞台にした本大会でも安定したプレーを展開。第1ラウンドを4バーディー・ノーボギーの68で回り、首位と2打差の4位タイでフィニッシュした。
「グリーンを外したホールでは、アプローチでカップにうまく寄せられ、パーセーブできたことで(プレーの)よい流れをつかめたと思います。グリーンスピードがいつもより早くはありませんが、それにも対応できたのも良かったですね」。
昨年は海外メジャーにも挑み、経験値を高め、技術的にも精神的にも成長ぶりを伺わせている。実際、岩井自身も「(海外メジャー参戦で)アプローチショットのバリエーションが増えました」と言い切る。
開幕戦に続いて2度目の4日間大会だけに、まだ54ホールが残っている。「天候が下り坂で雨が降るので、臨機応変に対応したいですね。硬くても(雨で)軟らかくてもピン奥に着けたのではパーセーブが難しいグリーンなので。パー5ホールでスコアを着実に伸ばしていきたいものの、無理には狙わず、その時の状況に応じて攻めるのか、刻むのかの明確な判断をし、対応して行きたい。やるべきことをやり続けることが大切だと感じます」。
4日間大会での今季2勝目達成かを尋ねると「何が起こるのか分からないのがゴルフ。ですから3日間大会でも4日間大会でも最後まで気を抜かずにプレーします」。自分に言い聞かせるように岩井はプレー信条を話したのだった。
春ゴルフは不公平なのかもしれない。午前と午後とではコースコンディションが大きく異なることが多い。たとえば午前中は、ほとんど無風だったとしても、午後からは風(この日は風速5・8m/s)が強まったりする。
風が吹くほどグリーンは硬く引き締まり、グリーンスピードは速まる。ピンフラッグが揺れっぱなしの状況でのパットを強いられ、さらには、午前スタートの選手がプレーした後ということもあり、スパイクマークが皆無とは決して言えないからだ。これが“不公平”の主な理由として挙げられる。
今大会の第1ラウンドは、午後から風が強まったこともあり、トップテンフィニッシュした選手のうち、午前スタートの選手が8選手、午後スタートの選手が2選手だった。
そんなコースコンディション下、午後スタートの選手の中で「トップスコア」を叩き出したのが竹田麗央だ。アウトコース12時40分スタート。2番ホールから4連続バーディーを決めてハーフターン。12番・パー4でボギーを打ったものの、15番・パー5で会心のイーグル奪取。16番・パー4でもバーディーを奪ってみせた。
17番・パー3をボギーとしたものの、終わってみれば1イーグル・5バーディー・2ボギーの67でフィニッシュして、2位タイまで順位を上げたのは、見事の一言に尽きる。
「今日は結構チャンスについて、それが入って4連続バーディーが獲れたので、良い流れでプレー出来たと思います。上がり3ホールは雨が強まり、スコアを伸ばせませんでした。明日からも自分のプレーに集中して回りたいです」。
竹田は好スタートを決して無駄にはしない気構えを見せたのだった。ツアー初優勝へのチャンスを引き寄せたのは確かだ。
(文・写真:伝昌夫、菅野雅裕)